サビカスのキャリア構成理論を使ったカウンセリング方法

2025年1月3日

サビカスのキャリア構成理論とは

サビカス(Mark Savickas)のキャリア構成理論は、キャリア発達の従来の理論(例:ホランドの職業興味理論やスーパーのライフキャリアレインボー)を基盤に、ポストモダン的な視点を取り入れた理論です。この理論では、個人のキャリアを「ストーリー」として捉え、過去の経験や価値観、現在の選択、未来の目標を統合するプロセスを通じてキャリアを構成していきます。

主な特徴は以下の通りです:

  • キャリア構成:個人が自分の職業的な自己概念を形成し、キャリア選択や意思決定に活用する。
  • 意味づけ:キャリアの選択や経験を通じて、自己の人生に意味を見出すプロセス。
  • 物語アプローチ:クライエントの人生の物語を中心にしたカウンセリング手法。

キャリア構成理論の全体像については以下の記事で書きました:

キャリア構成カウンセリングの基本プロセス

サビカスのキャリア構成理論に基づくカウンセリングでは、以下のステップを通じてクライエントのキャリア選択を支援します。

ステップ1:クライエントの物語を傾聴する

カウンセラーはクライエントに対して以下のような質問を通じて、その人生のストーリーを引き出します:

  • 過去の経験に関する質問
    • 子供の頃の好きだった活動や夢は何ですか?
    • 今でも覚えている大切な出来事や影響を受けた人について教えてください。
  • 価値観に関する質問
    • あなたが最も大切にしている価値や原則は何ですか?
    • 自分にとって「成功」とはどのような状態を指しますか?
  • 未来のビジョンに関する質問
    • これからの人生で何を達成したいと思いますか?
    • 理想のキャリア像はどのようなものですか?

このプロセスでは、クライエントが自然に語る話の中に含まれるテーマやパターンに注意を向けます。

ステップ2:ライフテーマを特定する

サビカスの理論では、クライエントの物語の中に繰り返し現れる「ライフテーマ」を特定することが重要です。これらのテーマは、クライエントがどのような価値観や目標を持ち、それに基づいてどのように行動しているのかを示す鍵となります。

  • ライフテーマの例
    • 「挑戦と克服」:困難を乗り越える経験に喜びを感じる。
    • 「人とのつながり」:他者と関わり合いながら成長することを重視する。
    • 「独立性」:自分自身で道を切り開くことに価値を置く。

クライエントの語りの中で頻出する言葉や感情に注意を払い、彼らが何にエネルギーを注いでいるのかを明確にします。

ステップ3:キャリアのメタファーを構築する

ライフテーマを基に、クライエントが自分のキャリアや人生をどのように捉えているのかを表現する「メタファー(比喩)」を見つけます。

  • メタファーの例
    • 「人生は旅」:新しい経験や未知の可能性を探求する。
    • 「人生は舞台」:人々の前で自分の役割を演じ、観客を感動させる。
    • 「人生は庭」:努力を注いで育てた成果を大切にする。

このプロセスを通じて、クライエントは自分のキャリアを再解釈し、新たな方向性を発見することができます。

ステップ4:キャリア目標と行動計画を設定する

特定したライフテーマやメタファーを基に、クライエントが現実的なキャリア目標を設定できるようサポートします。

  • 短期目標と長期目標
    • 短期的に達成可能な目標(例:新しいスキルの習得、ネットワークの拡大)。
    • 長期的なキャリア目標(例:特定の役職への昇進、独立して事業を立ち上げる)。
  • 具体的な行動計画
    • 各目標に対して具体的なステップを設定します。
    • 行動の進捗を測定し、必要に応じて計画を修正します。
  • モチベーション維持の工夫
    • ライフテーマやメタファーを思い出すことで、目標達成に向けた意欲を維持します。

ステップ5:定期的な振り返りと調整

キャリア構成カウンセリングは、一度で完結するものではありません。定期的な振り返りを行い、クライエントの状況や価値観の変化に応じて計画を調整します。

  • カウンセリングの振り返り
    • クライエントがどのように目標に向かって進んでいるかを確認。
    • 新たに気づいたテーマや興味があれば、計画に組み込む。
  • 自己成長の確認
    • キャリアだけでなく、人生全体の成長を評価します。

サビカス理論を活用する際の注意点

  • 個別性の尊重:クライエントごとに異なる物語や価値観を持っているため、一律の方法を適用しないこと。
  • 共感的な態度:クライエントが自分のストーリーを語る際、カウンセラーは共感的に受け止め、否定や批判をしない。
  • 自己決定を促す:カウンセラーが答えを提供するのではなく、クライエント自身が答えを見つけられるよう支援する。

まとめ

サビカスのキャリア構成理論は、物語アプローチを用いることでクライエントのキャリアを再構成し、自己の人生に意味を見出すプロセスを支援します。ライフテーマやメタファーの発見を通じて、クライエントは自分自身を深く理解し、キャリア選択や行動計画を自信を持って進めることができます。このアプローチは、キャリアカウンセリングだけでなく、人生全般の方向性を見直す際にも有用です。


カテゴリートップへ