キャリアアンカー(Career Anchor)は、自分のキャリアの「軸」を明確にするための概念です。この考え方を理解することで、自分にとって本当に大切なものが何かを見極め、より満足度の高いキャリア選択が可能になります。
この記事ではキャリアアンカーについて初めての方向けに、その全体像を把握できるような分かりやすい解説をしていきます。
目次
誰が提唱したのか?
キャリアアンカーは、アメリカの組織心理学者であるエドガー・シャイン(Edgar Schein)が提唱しました。シャインは、キャリアにおける個人の価値観や動機、能力がどのように形成され、キャリア選択に影響を与えるかを研究し、その結果としてキャリアアンカー理論を確立しました。
キャリアアンカーの概要
キャリアアンカーとは、自分がキャリアを選択する際に絶対に譲れない価値観や動機、能力のことです。これらは、キャリアの初期段階で試行錯誤を繰り返す中で徐々に明確になります。
- 定まるタイミング: キャリアアンカーは、一定期間働き、さまざまな経験を積むことで明確になります。例えば、数年間仕事をする中で「自分が何を重視して働いているのか」「何にやりがいを感じるのか」が見えてきます。
- 1人1つのキャリアアンカー: 人は最終的に1つのキャリアアンカーに落ち着くと言われていますが、初期段階では複数の可能性を抱えていることもあります。
どのような人が活用すべきか?
キャリアアンカーは、特に以下のような人に役立ちます:
- キャリアの方向性に悩んでいる人
- 「今の仕事が自分に合っているのか分からない」「転職すべきか迷っている」と感じている人。
- 自分の強みや価値観を整理したい人
- 自分にとって本当に大切なものが何かを明確にしたい人。
- 将来のキャリア選択を検討している若手社会人
- 経験を積みながら自分に合った軸を徐々に見つけていきたい人。
どのような状況で活用すべきか?
キャリアアンカーは、以下のような状況で活用すると効果的です:
- 転職やキャリアチェンジを考えているとき:
- 新しい仕事を選ぶ際に、自分の本当の価値観に合った選択ができます。
- 昇進や異動の提案を受けたとき:
- 自分のキャリアアンカーに基づいて、受けるべきかを判断できます。
- キャリアの方向性が曖昧になっているとき:
- 自分にとって何が重要かを再確認し、方向性を定める手助けになります。
キャリアアンカーの種類と解説
シャインは、キャリアアンカーを以下の8つに分類しました。これらは、それぞれ異なる価値観や動機を反映しています。
- 専門能力(Technical/Functional Competence)
- 特定の分野で専門的なスキルや知識を高め、成果を出すことに価値を感じる。
- 例: エンジニア、医師、研究者。
- このアンカーの解説:
- 管理職志向(General Managerial Competence)
- 組織全体を見渡し、リーダーシップを発揮することにやりがいを感じる。
- 例: 部長、CEO。
- このアンカーの解説:
- 自律・独立(Autonomy/Independence)
- 自分のペースで自由に働くことを重視し、他人の干渉を嫌う。
- 例: フリーランス、起業家。
- このアンカーの解説:
- 安定・保障(Security/Stability)
- 長期的な雇用や収入の安定を最優先に考える。
- 例: 公務員、大企業の正社員。
- このアンカーの解説:
- 起業家精神(Entrepreneurial Creativity)
- 新しいビジネスを立ち上げたり、クリエイティブな方法で問題を解決することに情熱を持つ。
- 例: スタートアップの創業者。
- このアンカーの解説:
- 奉仕・社会貢献(Service/Dedication to a Cause)
- 社会や他者の役に立つことに価値を感じる。
- 例: NPO職員、医療従事者。
- このアンカーの解説:
- 挑戦(Pure Challenge)
- 困難な課題を解決し、競争に勝つことに喜びを感じる。
- 例: トップアスリート、戦略コンサルタント。
- このアンカーの解説:
- ライフスタイル(Lifestyle)
- 仕事とプライベートのバランスを重視し、自分の理想的な生活を実現することを優先。
- 例: ワークライフバランスを重視する働き方。
- このアンカーの解説:
まとめ
キャリアアンカーは、自分のキャリアの方向性を見定めるための重要なフレームワークです。エドガー・シャインの理論を活用することで、自己理解が深まり、キャリア選択に迷うことが少なくなります。特に転職や昇進など、大きなキャリアの節目に直面している方にとって、大きな助けとなるでしょう。